トヨタのタウンエースバンは、そのスクエアで広大な荷室空間と、狭い道でも取り回しの良いコンパクトなボディサイズから、多くのビジネスシーンや個人事業主、さらにはアウトドアや車中泊を楽しむアクティブなユーザーまで幅広く支持されています。しかし、購入を検討する際に「タウンエースは燃費が悪い」という噂を耳にして、維持費の面で不安に感じている方も多いのではないでしょうか。時には「最悪」という厳しい評価もあり、実際の燃費性能は購入を決断する上で非常に重要な要素です。
この記事では、タウンエースの燃費が悪いという評判の真相を、ユーザーから寄せられたリアルな口コミや公式のカタログスペックを基に、多角的に徹底検証します。特に気になる4WDの燃費性能や、満タンからの現実的な走行距離、そして燃料タンク容量といった具体的な情報から、最大のライバル車である日産NV200との燃費比較まで、詳しく掘り下げて解説していきます。また、現在ディーゼルの新車やハイブリッドモデルの燃費に関する選択肢はあるのか、中古で購入する際の注意点にも深く触れていきますので、ぜひあなたの車選びの参考にしてください。
- タウンエースのリアルな実燃費
- 燃費が悪化する具体的な要因
- ライバル車との燃費性能比較
- 購入前に知るべきモデル選びのコツ
タウンエースの燃費は悪い?ユーザーの声から見る実態
- 口コミに見る最悪と言われる燃費
- 4WDの燃費は特に悪いのか
- 燃料タンク容量と給油頻度の関係
- 満タンでの走行距離はどのくらい?
- ライバル車NV200の燃費と比較
口コミに見る最悪と言われる燃費
タウンエースの燃費についてインターネットで情報を集めると、「燃費が悪い」「期待外れ」「最悪」といったネガティブな口コミが目立つことがあります。実際にユーザーが日々記録している燃費投稿サイトなどを見ると、その評価にはある程度の根拠があることがうかがえます。
例えば、市街地での配送業務など、ストップ&ゴーが頻繁に発生する環境で、なおかつエアコンを多用する夏場といった特定の条件下ではリッターあたり6km~7km台まで実燃費が落ち込むという声が複数見られます。商用車は乗用車に比べて車両重量が重く、空気抵抗の大きい箱型のボディ形状をしているため、元々燃費には不利な条件が揃っています。タウンエースも例外ではなく、特に荷物を満載した状態での市街地走行は、燃費にとって最も厳しいシチュエーションと言えるでしょう。また、一部のユーザーからは「エンジンを回してもパワーが不足気味に感じる」という意見もあり、発進時や合流時に無意識にアクセルを深く踏み込んでしまう機会が増えることも、燃費悪化の一因と考えられます。
燃費に関する厳しい口コミの具体例
- 「せいぜい7km/l程度。一番悪い時は5〜6km/lまで落ち込んだこともある。」
- 「夏場にエアコンを点けて街中を走ると、リッター6〜7kmは覚悟が必要。」
- 「ATなので仕方ないかもしれないが、エアコン使用時はリッター8kmを切ってしまう。」
ただ、全てのユーザーの燃費記録が悪いわけではありません。これはタウンエースの擁護というわけではなく、事実として運転の仕方や走行環境によっては、リッターあたり12km、時には15kmを超えるという良好な数値を記録しているケースも存在します。特に、2020年9月のマイナーチェンジで、より燃焼効率に優れた新開発の「2NR-VEエンジン」が搭載されてからは、燃費性能が向上したという評価が顕著に見受けられます。高速道路を時速80km~90km程度で一定速度を保って走行するような、いわゆるクルージング燃費は比較的良いという声が多く、使い方次第で燃費は天と地ほどの差が生まれるのがタウンエースの特徴とも言えるのです。

結論として、タウンエースの燃費は乗り方や積載量、走行環境(市街地か高速か)に大きく左右されると言えます。特に市街地での業務利用がメインの方は、カタログ値よりも2割~3割程度低い実燃費を想定しておくと、購入後のギャップが少ないでしょう。
4WDの燃費は特に悪いのか
降雪地域での業務や、未舗装路を走行する機会があるユーザーにとって、4WDは必須の装備です。タウンエースバンに設定されている4WDシステムは、その高い走破性で悪路での安定した走行に貢献しますが、その構造上、燃費性能においては2WDモデルに比べて不利になるのが一般的です。タウンエースバンもその例に漏れず、4WDモデルは2WDモデルよりも明確に燃費が悪化する傾向にあります。
その主な理由は、大きく分けて2つあります。1つ目は、プロペラシャフトやトランスファーといった4WD特有の部品が追加されることによる車両重量の増加です。2つ目は、タウンエースが採用する「フルタイム4WD」の特性による常時発生する駆動抵抗の増大です。このシステムは常に四輪に駆動力を配分するため、安定性が高い反面、エネルギーロスも大きくなります。口コミでも「4躯だし、仕事で使うラダーやルーフキャリアも付けてるから重さで燃費が悪い」といった、複合的な重量増が燃費に影響しているという声が見られます。
実際に、公式サイトに掲載されているカタログ燃費(WLTCモード)を比較してみると、その差は誰の目にも明らかです。
駆動方式・トランスミッション別 カタログ燃費比較
駆動方式 | トランスミッション | カタログ燃費(WLTC) | 市街地モード | 高速道路モード |
---|---|---|---|---|
2WD (FR) | 4AT | 12.0 km/L | 9.9 km/L | 13.1 km/L |
4WD | 4AT | 11.4 km/L | 9.3 km/L | 12.6 km/L |
2WD (FR) | 5MT | 12.6 km/L | 10.7 km/L | 13.7 km/L |
4WD | 5MT | 12.2 km/L | 10.3 km/L | 13.3 km/L |
このように、同じAT車で比較した場合、4WDモデルは2WDモデルよりも約5%燃費が悪くなります。年間走行距離が20,000kmに達するようなヘビーユーザーの場合、この差はガソリン代として年間1万円以上の差額になる可能性もあります。そのため、降雪地帯にお住まいの方や、業務でどうしても4WDが必要な方以外は、経済性の観点から2WDモデルを選択するのが賢明な判断と言えるでしょう。
燃料タンク容量と給油頻度の関係
タウンエースバンの燃費を実用面で評価する上で、意外と見落とされがちなのが燃料タンクの容量です。タウンエースバンの燃料タンク容量は、駆動方式やグレード、トラックかバンかといった違いに関わらず全モデルで一律43Lに統一されています。
主要小型商用バンの燃料タンク容量比較
- トヨタ タウンエースバン:43L
- 日産 NV200バネット:55L
- マツダ ボンゴバン:53L
ライバル車種と比較すると、タウンエースのタンク容量は10L以上も小さいことがわかります。この43Lという容量は、実燃費があまり良くないタウンエースにとって、「給油頻度が高くなる」という直接的なデメリットに繋がります。ユーザーの口コミでも「ガソリンタンクが小さいから、山の中や高速道路での長距離移動ではいつも燃料計を気にしている」といった声が上がっており、心理的な負担や時間的なロスを感じている方が少なくありません。特に地方や山間部で利用する場合、ガソリンスタンドの数も限られるため、こまめな給油計画が必須となります。
満タンでの走行距離はどのくらい?
燃料タンク容量が43Lであることから、タウンエースバンが満タンの状態でどれくらいの距離を走行できるのかは、日々の使い勝手を左右する重要なポイントです。航続距離は当然ながら、積載量や走行パターンによって大きく変動する実燃費に依存します。
ここでは、想定される燃費ごとに満タンからの航続距離の目安を計算し、さらに月々のガソリン代についてもシミュレーションしてみます。
【シミュレーション】実燃費別の航続距離と月間ガソリン代
計算式:実燃費 (km/L) × 燃料タンク容量 (43L)
※ガソリン価格は175円/L(レギュラー)で計算。(資源エネルギー庁 石油製品価格調査を参考に設定)
走行パターン | 想定実燃費 | 満タン航続距離 | 月1,000km走行時のガソリン代 |
---|---|---|---|
街乗り中心 | 8.0km/L | 約344km | 約21,875円 |
郊外走行含む | 10.0km/L | 約430km | 約17,500円 |
高速走行中心 | 12.0km/L | 約516km | 約14,583円 |
※上記はあくまで目安です。実際の費用は、走行条件やガソリン価格の変動によって変わります。
このように、街乗り中心で燃費が悪化すると、満タンにしても350km程度しか走れない計算になり、東京から名古屋までの移動も無給油では難しい距離です。一方で、燃費が伸びやすい高速走行がメインであれば、500km以上の航続も可能です。車の警告灯(給油ランプ)が点灯するのは、一般的に残量が10L前後になったタイミングが多いため、実際にはランプ点灯から80km~100km程度は走行できる計算ですが、精神衛生上、早めの給油を習慣づけるのが安心です。
ライバル車NV200の燃費と比較
小型商用バンを検討する際、必ずと言っていいほど比較対象として名前が挙がるのが、日産のNV200バネットです。タウンエースバンとNV200バネットは、日本のビジネスシーンを支える最大のライバル関係にあり、燃費性能も購入を決定する上で重要な比較ポイントとなります。
結論から言うと、カタログ燃費(WLTCモード)においては、複数の項目でNV200バネットの方が優れているという結果になっています。詳細なスペックを比較してみましょう。
タウンエース vs NV200 主要スペック比較(2WD・AT車)
項目 | トヨタ タウンエースバン | 日産 NV200バネット |
---|---|---|
カタログ燃費(WLTC) | 12.0 km/L | 13.1 km/L |
エンジン | 1.5L ガソリン | 1.6L ガソリン |
駆動方式 | FR (後輪駆動) | FF (前輪駆動) |
燃料タンク容量 | 43 L | 55 L |
最小回転半径 | 4.9 m | 5.2 m |
(出典:日産自動車公式サイト NV200バネットの情報を基に作成)
この燃費差を生む最大の要因は、駆動方式の違いです。タウンエースバンがFR(後輪駆動)を採用しているのに対し、NV200バネットはFF(前輪駆動)を採用しています。一般的にFFはFRに比べてプロペラシャフトなどの部品が不要で、駆動伝達のロスが少ないため、燃費面で有利とされています。
もちろん、燃費性能だけで車の優劣が決まるわけではありません。FRのタウンエースバンは、重い荷物を積んだ際の前後重量バランスに優れ、走行安定性が高いというメリットがあります。また、表の通り最小回転半径が4.9mと非常に小さく、狭い路地や駐車場での取り回しの良さはNV200バネットを上回ります。どちらの車種を選ぶかは、燃費性能と、こうした実用性のトレードオフを総合的に比較検討して判断することが重要です。
タウンエースの燃費が悪いと言われる要因とモデル選び
- 中古で買う際の燃費の注意点
- 過去のディーゼルモデルの燃費は?
- ディーゼルの新車は現在あるのか
- ハイブリッドの燃費はどうなの?
- タウンエースの燃費は悪いのか総括
中古で買う際の燃費の注意点
新車よりもリーズナブルに手に入る中古のタウンエースバンは非常に魅力的ですが、購入する際には年式やモデルによる燃費性能の違いに特に注意が必要です。最も大きなターニングポイントとなったのが、記憶に新しい2020年9月のマイナーチェンジです。
このマイナーチェンジを境に、心臓部である搭載エンジンが刷新されました。
エンジン型式の違いによる燃費性能の変化
- マイナーチェンジ前(〜2020年8月):
型式:3SZ-VE
特徴:基本的な設計で、可変バルブタイミング機構などを備える。 - マイナーチェンジ後(2020年9月〜):
型式:2NR-VE
特徴:燃焼効率の向上やフリクション低減を徹底。アイドリングストップ機能も標準装備。
新しい2NR-VE型エンジンは、近年の乗用車にも採用されている技術が投入されており、旧型エンジン搭載モデルと比較してカタログ燃費で約20%もの向上を実現しています。実際にユーザーからも「アイドリングストップのおかげか、街乗りでの燃費が明らかに良くなった」という声が聞かれます。
中古車選びで必ず確認したいメンテナンス項目
中古車は、前オーナーの乗り方やメンテナンス状況によって燃費性能が大きく左右されます。購入前には以下の項目を重点的に確認しましょう。
- エンジンオイル:定期的に交換されていたか(記録簿を確認)
- エアクリーナーエレメント:汚れや詰まりはないか
- スパークプラグ:消耗していないか
- タイヤ:空気圧は適正か、低燃費タイヤを装着しているか
結論として、少しでも燃費の良いモデルを中古で探しているのであれば、予算が許す限り2020年9月以降の高年式モデルを狙うのが最善の選択です。車両価格は高くなりますが、日々のガソリン代の節約分や、衝突被害軽減ブレーキ「スマートアシスト」が標準装備されることによる安全性の向上を考えれば、十分にその価値はあると言えるでしょう。
過去のディーゼルモデルの燃費は?
「商用バンたるもの、力強く経済的なディーゼルエンジンでなければ」と考えるベテランの事業者の方も少なくないでしょう。実際、タウンエースの長い歴史を振り返ると、1996年から2007年まで販売されていた先代モデル(R40/50系)には2.2Lのディーゼルターボエンジン(3C-TE型)を搭載したモデルが存在しました。
当時のディーゼル車は、ガソリン車を凌駕する低回転からの力強いトルクと、燃料である軽油の安さから、重量物を頻繁に運ぶ建設業や配送業のユーザーに絶大な支持を受けていました。しかし、2000年代に入り、年々厳しくなる排出ガス規制(特にNOx:窒素酸化物やPM:粒子状物質の削減)への対応が技術的にもコスト的にも難しくなり、現行の400系にフルモデルチェンジする前の段階で、残念ながら国内のラインナップからは姿を消しています。

口コミでも「昔乗っていたディーゼルのタウンエースは本当にタフで燃費も良かった」「今の時代にこそクリーンディーゼルモデルが欲しい」といった声が見られ、今なおディーゼル車の復活を望む声があることが伺えますね。
このような背景から、現在の中古車市場で「タウンエースバン」として流通している400系(S402M/S412M型以降)は、すべてガソリン車となります。もしどうしてもディーゼルエンジン搭載のバンが必要な場合は、より車格の大きいハイエースや日産キャラバンといった車種が選択肢となります。
ディーゼルの新車は現在あるのか
前述の通り、過去にはディーゼルモデルが存在したタウンエースですが、2025年9月現在、新車で販売されている現行モデルにディーゼルエンジンの設定は一切ありません。
現在のタウンエースバンおよびタウンエーストラックに搭載されているエンジンは、1.5Lの「2NR-VE」ガソリンエンジンのみであり、これはトヨタ自動車の公式サイトでも確認できます。
現行タウンエースのエンジンラインナップ(全グレード共通)
1.5L 直列4気筒 DOHC ガソリンエンジン(2NR-VE)のみ
※ディーゼル、ハイオク仕様、軽油、LPGなどの燃料バリエーションはありません。
このラインナップの背景には、タウンエースがダイハツによって開発・製造され、インドネシアの工場から供給されるグローバルモデル「グランマックス」をベースとしている点が大きく関係しています。主な販売市場である東南アジア諸国では、シンプルで信頼性が高く、メンテナンスコストを抑えられる小型ガソリンエンジンが主流です。そのため、日本市場向けにコストをかけてクリーンディーゼルエンジンを開発・搭載するという選択肢は、ビジネス戦略上、採用されなかったと考えられます。
ハイブリッドの燃費はどうなの?
ガソリン価格の高騰が続く現代において、低燃費車の代名詞であるハイブリッドモデルの有無は、購入を検討する上で非常に気になるポイントです。しかし、結論から言うと、タウンエースバンにはハイブリッドモデルはラインナップされていません。
商用車にハイブリッドシステムを搭載するには、乗用車とは異なる特有の課題が存在します。
商用車におけるハイブリッド化の課題
- 車両価格の大幅な上昇:高価なバッテリーやモーターは、コストを重視する商用車では採用しにくい。
- 荷室スペースの減少:大型の駆動用バッテリーを搭載するスペースを確保すると、商用車として最も重要な荷室が犠牲になる可能性がある。
- 重量増による最大積載量への影響:重いハイブリッドシステムは、法律で定められた最大積載量を圧迫してしまう。
- 過酷な使用環境での耐久性:長距離・長時間走行や頻繁なストップ&ゴーといった過酷なビジネスユースに耐えうるバッテリーの耐久性・信頼性が求められる。
タウンエースバンは、「手頃な価格」と「クラス最大の積載性」を最大の強みとするモデルです。これらの強みを損なう可能性があるハイブリッドシステムの採用は、現時点では見送られているのが実情です。
トヨタの商用車ラインナップで燃費性能を最優先に考えるのであれば、プロボックスにハイブリッドモデル(WLTCモード燃費22.6km/L)が設定されています。積載性や室内の広さはタウンエースに劣りますが、燃料コストを劇的に抑えたい場合には、有力な選択肢となるでしょう。
タウンエースの燃費は悪いのか総括
この記事では、タウンエースの燃費が悪いという評判について、ユーザーの口コミからライバル車との比較、モデル選びの注意点まで、様々な角度から検証しました。最後に、この記事で解説した重要なポイントをまとめます。
- タウンエースの燃費は「悪い」という口コミが多数存在するが、運転次第で「良い」結果も出る
- 特に市街地走行やエアコン使用時の燃費悪化が顕著で、実燃費はリッター7kmから12km程度が目安
- 4WDモデルは構造上2WDより燃費が劣るため、必要性が低いなら2WDが経済的
- 燃料タンク容量は43Lとライバル車より小さめで、給油頻度は高くなる傾向にある
- 満タンからの航続距離は運転状況により大きく変動し、街乗り中心だと350km前後になることも
- 2020年9月のマイナーチェンジで新エンジンが搭載され、燃費性能は大幅に向上した
- 中古車を選ぶなら、燃費と安全装備の観点から2020年9月以降のモデルが断然おすすめ
- ライバル車の日産NV200バネットの方が、カタログ燃費やタンク容量では優れている
- 現行のタウンエースにディーゼルの新車設定はなく、ガソリン車のみのラインナップ
- 過去にはディーゼルターボモデルも存在したが、排出ガス規制により廃止された
- 低燃費が期待されるハイブリッドモデルの設定も、コストや積載性の問題から現在は存在しない
- 商用車というカテゴリーの中では、決して突出して悪い燃費ではなく平均的な水準ともいえる
- 燃費性能は、日々の運転方法(急発進を避ける等)やこまめなメンテナンスで改善が可能
- 最終的には、積載性や取り回しの良さといったタウンエースならではのメリットと燃費を天秤にかけることが重要
- 購入前には自身の主な用途を明確にし、実燃費の口コミを照らし合わせて判断することが賢明