ランクル70は維持できない？後悔しないための費用と現実を解説

こんにちは。Car Research Lab、運営者の「Mee」です。

生ける伝説とも呼ばれるトヨタのランドクルーザー70ですが、購入を検討する中で「ランクル70は維持できない」という噂や書き込みを目にして、急に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。憧れのヘビーデューティーSUVを手に入れたいけれど、実際の維持費や年収の目安がどれくらいなのか、あるいは1ナンバーと3ナンバーで具体的にどのような金額差が生まれるのかは、購入前に絶対にクリアにしておきたい問題です。

また、ディーゼルエンジン特有の燃費性能やAdBlue（尿素水）の管理、そして毎年車検の手間など、買ってから「こんなはずじゃなかった」と後悔したくないポイントは山ほどありますよね。この車は、現代の快適で親切なクロスオーバーSUVとは対極にある、いわば「プロの道具」のような存在です。だからこそ、良い面だけでなく、所有者にのしかかる厳しい現実もしっかりと理解しておく必要があります。

ランクル70を維持できない金銭的な理由と現実

「維持できない」と嘆かれる最大の要因は、やはりその特殊なコスト構造にあります。一般的なファミリーカーであるミニバンやコンパクトSUVと同じ感覚で所有しようとすると、春の自動車税や毎回の給油、そして保険の更新時に、想定を遥かに超える出費を強いられ、家計が圧迫されてしまう可能性が非常に高いです。まずは、実際にどれくらいの金額がかかるのか、金銭的な側面からその現実を詳細に見ていきましょう。

ランクル70の維持費と必要な年収の目安

ランクル70を所有する上で、まず直面するのが「固定費の重さ」です。車両本体価格が500万円近い高級車であることもさることながら、毎年あるいは隔年で訪れる税金や車検費用、そして毎月のランニングコストは、軽自動車やコンパクトカーとは次元が異なります。

例えば、最新のディーゼルモデル（GDJ76）を3ナンバー（乗用）で登録し、都内で月極駐車場を借りて維持する場合を想定してみましょう。車両ローンの返済を一切含めない、純粋な維持費だけであっても、年間で約80万円以上、月額換算で約7万円程度の出費がコンスタントに必要になる計算です。これは、毎月手取り給与から7万円が消えていくことを意味します。

具体的な維持費の内訳（GDJ76・3ナンバー）

ここに車両ローンの返済（例えば月々5万円～8万円）が加わると、車関係だけで毎月12万～15万円の固定支出になります。これを無理なく、かつ生活の質を落とさずに支払うための年収の目安としては、独身で実家暮らしであれば年収500万円程度でも可能かもしれませんが、ご家庭があり、住宅ローンや教育費もかかる状況であれば、世帯年収で800万円～1000万円以上はないと、他の生活費や将来への貯蓄を著しく圧迫して「維持できない」と感じる可能性が高いでしょう。

1ナンバー登録なら税金は安く済むのか

ランクル70オーナーの間で、長年「維持費節約の切り札」として活用されてきたのが「1ナンバー（普通貨物自動車）」としての登録です。3列目シートを取り外す（あるいは元々ないバンモデルを選ぶ）などして貨物要件を満たすことで、税制上の優遇を受ける手法です。

確かに、1ナンバー化することで毎年の自動車税は劇的に安くなります。3ナンバー（乗用）の場合、2.8Lエンジンの自動車税は50,000円ですが、これが1ナンバー（貨物）になると、排気量に関わらず積載量ベースの課税となるため、年額16,000円程度まで下がります。差額は年間34,000円にもなり、非常に魅力的に思えます。しかし、安易に飛びつくと「こんなはずじゃなかった」と後悔する大きな落とし穴が存在します。

つまり、1ナンバーは「近場での移動がメインで、高速道路はあまり使わず、自分でユーザー車検を通せるような人」には恩恵がありますが、「週末は家族で高速に乗ってキャンプに行きたい」という一般的なレジャー用途であれば、トータルコストは大して変わらない、あるいは赤字になるケースも少なくありません。ご自身のライフスタイルと利用頻度を冷静にシミュレーションすることが重要です。

悪いと言われる燃費と燃料代の負担

「ディーゼル車＝燃料代が安い」というイメージだけでランクル70を選ぶのは危険です。その期待は、半分正解で半分間違いだからです。確かに燃料である軽油の単価は、レギュラーガソリンよりも1リットルあたり20円～30円ほど安いですが、ランクル70の実燃費自体が決して良くないため、トータルの燃料費は期待ほど安くなりません。

最新のGDJ76モデルのカタログ燃費（WLTCモード）は10.1km/Lですが、オーナーの実測値（実燃費）を見ると、平均して9km/L前後、信号や渋滞の多い市街地走行では7km/L～8km/L台まで落ち込むことが一般的です。車両重量が2.3トンもあり、空気抵抗の大きい角ばったボディ形状をしているため、物理的に燃費を伸ばすのが難しいのです。ハイブリッド車のように「リッター20km」走る車から乗り換えると、給油の頻度と金額に驚愕することになるでしょう。

AdBlue（尿素水）という新たな管理コスト

さらに、現代のクリーンディーゼルエンジン（1GD-FTV）には、燃料以外に「AdBlue（アドブルー）」という尿素水の定期的な補充が不可欠です。これは排気ガスを浄化するために消費されるもので、大体1,000km走るごとに1リットル程度消費します。1万km走れば10リットル～15リットルの補充が必要です。

AdBlue自体の価格は数千円程度ですが、問題はその「管理の手間」です。もし残量がゼロになると、法律上の規制によりエンジンの再始動ができなくなるようプログラムされています。長距離ドライブの最中に警告灯が点灯すると、ガソリンスタンドを探して走り回る羽目になります。また、自分で補充する場合、重いタンクを持ち上げてこぼさないように注入する作業は、服を汚すリスクもある面倒な作業です。

任意保険が高すぎて維持困難になる理由

多くの購入希望者が見落としがちで、見積もりを取ってから顔面蒼白になるのが「自動車保険（任意保険）」の異常な高さです。ランクル70は、中東やアフリカなど海外での需要が極めて高いため、非常に残念なことですが世界的に見ても盗難リスクがトップクラスに高い車両（Most Stolen Cars）の一つです。

日本の自動車保険制度では、事故や盗難のリスクに応じて「型式別料率クラス」が設定されますが、ランクル70の車両保険クラスは、ほぼ最大値（最もリスクが高い数字）に張り付いています。これは、過去の盗難実績があまりにも多いためです。

このため、特に以下のようなケースでは保険料が跳ね上がります。

• 若年層（20代）の契約: 年齢条件が厳しく等級も低い場合、年間30万円～40万円以上の保険料見積もりが出ることも珍しくありません。
• ネット型保険の引き受け拒否: 「リスクが高すぎて引き受けられない」として、一部のダイレクト系保険会社では、ランクル70の車両保険契約そのものを断られるケースが多発しています。

ローンで購入している場合、万が一盗難された際に数百万の残債だけが残るのを防ぐため、車両保険への加入は実質必須です。しかし、その保険料が家計を直撃し、結果として維持を断念せざるを得なくなるオーナーが後を絶ちません。

毎年車検のコストと手間のデメリット

先ほど1ナンバー登録の項目でも触れましたが、貨物登録を選んだ場合の「毎年車検」は、想像以上にオーナーの精神力を削ります。金銭的なコストもさることながら、「毎年必ずこの時期に整備工場に入庫しなければならない」というスケジュールの拘束が、忙しい現代人にとっては大きなストレスになります。

「たった1日預けるだけ」と思うかもしれませんが、代車の手配、荷物の積み下ろし、平日であれば仕事の調整など、付随する手間は馬鹿になりません。また、古いモデルのランクル70（HZJ系など）に乗る場合、車検は単なる検査ではなく「修理の機会」となります。ラジエーターの水漏れ、ハブベアリングのガタ、オルタネーターの劣化など、経年劣化による部品交換が毎年のように発生し、車検のたびに20万円、30万円の請求書を見ることも珍しくありません。「世界一丈夫な車」ではありますが、それは「メンテナンスフリーで乗りっぱなしにできる魔法の車」という意味ではないことを、深く肝に銘じておく必要があります。

ランクル70が維持できないと感じる物理的要因

お金の問題さえクリアできれば、あとは幸せなランクルライフが待っているかというと、現実はそう甘くありません。実際に所有してみると、その「ヘビーデューティーすぎる」特性が、日常使いにおいてじわじわとストレスを蓄積させることがあります。「憧れ」と「生活の道具」としてのギャップに苦しむケースです。

乗り心地が悪すぎて後悔するポイント

ランクル70は、一般的な乗用車（モノコック構造）ではなく、トラックと同じ「ラダーフレーム構造」を採用しています。さらに、リアサスペンションには「リーフスプリング（板バネ）」という、主に商用トラックやバスに使われる頑丈なバネが使われています。

この構造は、重い荷物を積んだり、岩場を走ったりする際には最強の耐久性を発揮しますが、人間数名だけが乗った「空荷」の状態では、バネが硬すぎて全く機能しません。その結果、舗装路の継ぎ目やマンホールの段差を越えるたびに、「ガツン！」「ドシン！」という強烈な突き上げが車内を襲います。

運転している本人はハンドルを握っているので身構えられますが、問題は同乗者です。後部座席は特に跳ねがひどく、家族や恋人からは「酔う」「乗り心地が最悪」「もう乗りたくない」と不評を買うことが非常に多いです。試乗の時は「このワイルドな揺れこそランクルの味だ！」と興奮しても、毎日の通勤や保育園の送迎、週末の買い物で揺られ続けると、次第にそれが苦痛へと変わっていきます。この「家族からの猛反対」に耐えきれず、快適なプラドやハリアーへの乗り換えを余儀なくされるパターンは、ランクル70の手放し理由の代表格です。

大きな車体サイズと小回りの利かなさ

全長4.89m、全幅1.87mという堂々たるボディサイズは、所有欲を大いに満たしてくれますが、日本の狭い道路事情では「小回りが利かない」ことが致命的な欠点になり得ます。特筆すべきは、その最小回転半径の大きさです。ランクル70（GDJ76）の最小回転半径は6.3mもあります。

スーパーの狭い駐車場や、都市部のコインパーキングでは、枠に入れるだけでも何度も切り返しが必要ですし、古い規格の駐車場ではそもそも入庫すらできないこともあります。「ちょっとコンビニに寄るのも億劫になる」というオーナーの声もあるほど、日常の足としての使い勝手は制限されます。この「巨大な鉄の塊」を日本の狭い路地で操るには、ある程度の運転技術と、何より「面倒くさがらない心」が必要です。

快適装備のない不便さに耐えられるか

500万円近い価格の車ですが、ドアを開けて内装を見ると、そのシンプルさに驚くかもしれません。いや、現代の基準からすれば「質素」と言っても過言ではないでしょう。最新のSUVなら当たり前のようについている、以下のような装備がランクル70にはありません（またはオプション設定すらありません）。

• スマートエントリー＆スタートシステム: ポケットに鍵を入れたままドアを開けたり、ボタン一つでエンジンをかけたりはできません。昔ながらのキーレスリモコンで鍵を開け、鍵穴にキーを差し込んで回す儀式が必要です。
• パワーバックドア: 重いリアゲートは手動で開け閉めする必要があります。
• 電動パワーシート: 座席の調整は全て手動のレバー操作です。
• 最新の快適装備: シートベンチレーションや、全車速追従のクルーズコントロール、大型の液晶メーターなどは望むべくもありません。

これを「不便益」や「壊れる箇所が少ない道具としての機能美」とポジティブに捉えられる人は良いですが、「高い車を買ったのだから快適だろう」と期待している人には、ただの「不親切で古い車」にしか映りません。維持するモチベーションを保つには、この不便さを愛せるだけの深い理解が必要です。

盗難対策にかかる手間と精神的ストレス

前述の通り、ランクル70は常に窃盗団のターゲットとされています。そのため、オーナーは物理的な盗難対策を講じることが義務のようになっています。ハンドルロック、タイヤロック（ホイールロック）、ブレーキペダルロック、後付けのセキュリティアラームなど、車を降りるたびに複数の重いロックをガチャガチャとかける手間が発生します。

また、対策をしていても「100%安全」とは言い切れないのが恐ろしいところです。「朝起きたら駐車場から車が消えているかもしれない」という不安と常に隣り合わせの生活になります。旅行先のホテルでも「駐車場は安全か？」「部屋から車が見えるか？」を常に気にしなければならず、気軽に乗っていけないという精神的なストレスは、想像以上に所有者の心を削ります。愛車を守るための戦いは、納車されたその日から手放すその日まで、24時間365日続くのです。

高いリセールで維持費は回収できるか

ここまでネガティブな要素を並べ立てましたが、それでもなお、ランクル70が多くの人を惹きつけ、選ばれ続けている最大の理由があります。それは「他の追随を許さない圧倒的なリセールバリュー（再販価値）」です。

ランクル70は世界中で需要があるため、どんなに年式が古くなっても、走行距離が20万km、30万kmと伸びても、値段がつかなくなる（査定ゼロになる）ことはほぼありません。特に人気の高い再販モデル（GRJ76）や再再販モデル（GDJ76）であれば、購入から数年乗っても、購入価格に近い金額、あるいはプレミア価格で売却できるケースすら多々あります。

日々の「維持費」は高いですが、それは将来返ってくるお金のための「資産管理手数料」や「保管料」のようなものだと割り切れるなら、経済的な合理性は十分にあると言えます。これが、多くのオーナーが維持し続けられる秘密のロジックです。

ランクル70を維持できないと諦める前に

ランクル70は、単なる「移動手段」として見れば、不便で、乗り心地が悪く、お金のかかる非効率な車かもしれません。しかし、それを補って余りある圧倒的な走破性、世界中から信頼される耐久性、そして「資産」としての価値を持っています。

「維持できない」と諦める前に、まずはご自身のライフスタイルと照らし合わせ、1ナンバー登録の活用や保険会社の見直し、そして何より「この車とどんな生活を送りたいか」をじっくり考えてみてください。「この車でなければ行けない場所がある」「この不便さこそが冒険だ」と心から思える覚悟が決まった時、ランクル70はただの車を超えて、あなたの人生を豊かにする最高の相棒になってくれるはずです。