アルファードのリセール崩壊は本当?最新相場とマレーシア輸出の真実こんにちは。Car Research Lab、運営者の「Mee」です。

最近、Googleの検索窓に「アルファード」と打ち込むと、サジェストの不穏な位置に「崩壊」や「暴落」という言葉が出てきてドキッとしたことはありませんか?ネットニュースやSNSでも「転売ヤー爆死」なんて過激なタイトルが踊っていますし、これからアルファードを買おうとしている方、あるいは既にオーナーの方にとっては、気が気じゃない話ですよね。

「まさか、私の愛車の価値が半値になってしまったの?」
「今買うと将来的に大損するんじゃないか?」

そんな不安を抱くのは当然です。でも、安心してください。情報の渦に巻き込まれずに、冷静に数字と市場の仕組みを紐解いていくと、世間で言われている「崩壊」とは全く違う、もう一つのリアルな景色が見えてきます。

今回は、中古車市場の最前線で起きている40系および30系アルファードの価格推移、そしてその相場を裏で操っている(と言っても過言ではない)マレーシアへの輸出事情について、私なりの視点で徹底的に深掘りします。これを読めば、今の相場が「終わり」ではなく「始まり」であることが分かるはずです。

この記事で分かること

  • ネットで騒がれる「崩壊」の正体と、実際のAA(オートオークション)相場の乖離
  • 「買っていいグレード」と「避けるべきグレード」の明確なリセール格差
  • 相場の命運を握るマレーシアの「Open AP制度」と輸出解禁の真実
  • 円安や競合EVの台頭を踏まえた、2026年以降の資産防衛戦略

アルファードのリセール崩壊の真相と最新相場

「崩壊」という言葉の響きは強烈ですが、市場で起きている現象を正しく言語化するなら、それは「崩壊」ではなく「異常値からの正常化」です。まずは、なぜこれほどまでに「崩壊」と騒がれているのか、そのメカニズムと現在の正確な立ち位置を、データに基づいて解説していきましょう。

  • 40系アルファードのリセール推移と価格変動
  • アルファードのリセールが悪いグレードの注意点
  • アルファード転売で損をするケースと要因
  • 30系後期の驚異的なリセールバリューの理由
  • マレーシア輸出規制とアルファード相場の関係

40系アルファードのリセール推移と価格変動

2023年6月に登場した40系アルファードがオークション会場で展示されている様子。多くの入札者が車を囲み、高額な値が付く熱気を表現している。40系アルファードが登場した2023年6月、自動車業界は異常な熱気に包まれていました。半導体不足による深刻な新車供給の遅れと、刷新されたモデルへの期待感が重なり、需要と供給のバランスが完全に崩壊していたのです。

1500万円オーバーという「幻影」

発売直後のオートオークション(AA)では、新車価格540万円〜872万円の車両に対し、1500万円、時には2000万円を超える落札額が付きました。これは「車としての価値」ではなく、「今すぐ手に入る権利」に対して支払われた、いわば投機的なプレミアム(バブル)です。

しかし、2025年現在は状況が一変しています。

市場環境の変化(2023年 vs 2025年)

  • 供給の回復: トヨタの生産ラインが正常稼働し、納期が大幅に短縮されました。
  • 誓約書の解禁: 「納車後1年は転売しない」という誓約書の縛りが解けた車両(通称:解禁組)が、市場に大量に流入し始めました。

現在の相場は「定価+α」の健全な水準へ

2025年10月現在、投機的な上乗せ分は綺麗に剥落しました。その結果、相場が1000万円近く下がったように見えるため「崩壊」と言われていますが、実態は「新車価格と同等、もしくは少し高い水準」に戻っただけなのです。一般的な輸入車や高級車が、登録した瞬間に新車価格の70%〜80%まで価値を落とすことを考えれば、今のアルファードの相場は「崩壊」どころか、依然として驚異的な高水準を維持していると言えます。

アルファードのリセールが悪いグレードの注意点

アルファードの異なるグレードのリセール価格が異なることを示す比較イメージ。上位グレードが伸び悩む一方で、ベースグレードの「Z」が好調であることを暗喩する。一口に「アルファード」と言っても、グレードによってリセールの世界線は全く異なります。ここを混同してしまうと、本当に資産価値を減らすことになりかねません。「崩壊」の直撃を受けているのは、実は憧れの最上級グレードなのです。

Executive Loungeの苦戦理由

最上級の「Executive Lounge(エグゼクティブラウンジ)」は、新車価格が872万円からと非常に高額です。しかし、現在の買取相場では新車価格を割り込む事例が増えています。

なぜでしょうか?答えは「関税」と「現地ニーズ」のミスマッチです。

主な輸出先であるアジア諸国では、車両本体価格が高くなればなるほど、現地での輸入関税が雪だるま式に増えていきます。また、現地の富裕層にとっても「日本の新車価格+輸送費+高額な関税+業者の利益」が乗ったエグゼクティブラウンジは、さすがに割高感が否めません。結果として、国内需要がメインとなり、輸出による価格の押し上げ効果が限定的になってしまうのです。

明暗分かれるグレード別評価

一方で、ガソリン車の「Z」グレードは絶好調です。以下の表で、その残酷なまでの格差を確認してみましょう。

グレード パワートレイン 新車価格(税込) 現在の市場評価とリセール傾向
Z 2.5L ガソリン 約540万円 【Sランク】
輸出の絶対的エース。新車価格以上の買取も十分狙える最強グレード。
Z Premier 2.4L ターボ 約655万円 【Bランク】
走りは良いが、燃費と関税のバランスで海外需要は限定的。やや軟調。
Executive Lounge 2.5L HEV 約872万円 【Cランク】
下落額が最大。「崩壊」の主震源地。リセール狙いなら避けるのが無難。

このように、「高いグレードほどリセールが良い」という常識は、アルファードに関しては通用しません。むしろ、ベースグレードに近い方が、輸出障壁が低く、世界中で奪い合いになるため価値が下がりにくいのです。

アルファード転売で損をするケースと要因

SNSなどで「アルファード転売で〇〇万円損した」という嘆きを見かけることがありますが、これは基本的に「買うタイミング」と「売るタイミング」を見誤った結果です。いわゆる「高値掴みの安値売り」ですね。

損をする典型的なパターン

最も大きな損失を出しているのは、2023年後半〜2024年前半のプレ値(プレミア価格)がついている時期に、中古車店で購入してしまった層です。新車価格の1.5倍〜2倍の価格で仕入れていれば、相場が正常化した現在、数百万円単位の含み損を抱えるのは必然です。

正規ディーラー購入組は無傷

一方で、正規ディーラーにて定価で新車を購入したオーナーはどうでしょうか。仮に今売却したとしても、Zグレードであれば購入価格と同等か、諸費用分をペイできる程度の金額で売れる可能性が高いです。数年間、最高級ミニバンに実質タダ(あるいはプラス)で乗れたことになります。

注意:短期転売のリスク

「買ってすぐ売れば儲かる」という考えは捨ててください。現在の市場は、輸出規制の関係で「登録から1年経過」などの年式要件を満たさないと、高値がつかないケースがあります。焦って手放すのが一番の損失要因です。

30系後期の驚異的なリセールバリューの理由

マレーシアの街中を走る30系アルファード(後期型)の様子。巨大なフロントグリルが現地で「成功者の証」として支持されている様子を表現している。40系の話題ばかりが先行しますが、実は今、中古車市場で異常なほどの底堅さを見せているのが、先代モデルである30系アルファード(後期型)です。特に「2.5 S Cパッケージ」というグレードは、伝説級のリセールバリューを維持しています。

5年乗っても新車価格超え?

通常、新型(40系)が出れば旧型(30系)の価値は暴落するのがセオリーです。しかし、30系に関しては逆転現象に近いことが起きています。データによっては、登録から5年経過した車両でも、当時の新車価格(約460万円前後)を上回る買取価格が付くことがあります。

なぜ「型落ち」がここまで強いのか

この謎を解く鍵は、輸出先であるASEAN諸国(特にマレーシア)のエンドユーザーの心理にあります。

  • 価格の合理性: 40系は新車価格自体が値上がりし、関税を含めると現地価格は非常に高額です。対して30系は、手頃な価格で日本の高級ミニバンに乗れる「現実的な選択肢」として大人気です。
  • デザインの信仰: 日本では見慣れた30系後期の巨大なフロントグリル(通称:オラオラ顔)ですが、海外ではこのデザインこそが「成功者の証」として依然として絶大な支持を集めています。
  • 輸出の「旬」: 多くの国の中古車輸入規制(製造から1年以上5年未満など)において、30系後期はまさに今、最も輸出しやすい「適齢期」のど真ん中にいます。

マレーシア輸出規制とアルファード相場の関係

日本からマレーシアへアルファードが輸出される様子。船に積まれ海を渡るアルファードと、マレーシアの港の風景。さて、ここからが本題です。アルファードのリセールを語る上で、マレーシア市場の動向は絶対に無視できません。なぜなら、日本の中古アルファードの最大の行き先であり、この国の政策一つで日本の相場が数十万円、時には百万円単位で動くからです。

衝撃の「Open AP」制度緩和

2024年7月、マレーシアの自動車輸入業界に激震が走りました。「Open AP(Approved Permit)」制度の緩和です。これは簡単に言えば、「中古車を輸入できる業者の枠を大幅に増やしますよ」という政策変更です。

従来、マレーシアで中古車を輸入する権利(AP)を持っていたのは、ブミプトラ(マレー系先住民)資本の一部の大手企業(約100社)に限られていました。しかし、政府はこの特権を開放し、条件を満たす企業なら誰でもAPを取得できるようにしました。

(出典:JETRO 日本貿易振興機構『マレーシア 自動車・二輪車産業の動向』マレーシアの投資制度・優遇措置

プレイヤー激増による「買い支え」効果

この緩和により、輸入業者の数は一気に約300社へと3倍増しました。新規参入した約200社の業者はどうするでしょうか?ビジネスを始めるために、商品を仕入れなければなりません。彼らが一斉に日本のオートオークションに参加し、アルファードやヴェルファイアを買い漁ったのです。

「アルファード リセール 崩壊」と騒がれる裏で、実は相場が底割れせずに一定の水準(Zグレードで500〜700万円台)で踏みとどまっている最大の要因は、このマレーシアからの新規バイヤーによる爆発的な買い注文にあるのです。

アルファードのリセール崩壊後の展望と対策

現状のメカニズムが分かったところで、気になるのは「これからどうなるか」ですよね。2026年に向けて、アルファードの資産価値はどう推移するのか、私たちが取るべき戦略とセットで考えていきましょう。

  • アルファードのリセールで5年後の残価率予想
  • リセールバリュー維持に必要なマレーシア情勢
  • 円安や競合EVがリセール相場に与える影響
  • 資産価値を守るためのグレード選びと保有戦略
  • まとめ:アルファードのリセール崩壊の真実

アルファードのリセールで5年後の残価率予想

先ほどの30系のデータを踏まえて40系の未来を予想すると、ガソリン車の「Z」グレードに関しては、5年後でも極めて高い残価率を維持する可能性が高いです。

具体的には、輸出規制の「旬」である登録後1年〜5年の間は、新車価格の80%〜100%程度(あるいはそれ以上)のレンジで推移すると見ています。「車は資産」という言葉がこれほど当てはまる車種は、世界中を探しても他にはありません。

ただし、条件がある

この明るい見通しは、あくまで「現在の輸出環境が維持されれば」という前提条件付きです。国内需要だけでこの価格を支えることは不可能です。常に海外の風向きをチェックする必要があります。

リセールバリュー維持に必要なマレーシア情勢

マレーシア市場に関しては、一つ良いニュースがありました。それが「奢侈税(しゃしぜい)」導入の断念です。

マレーシア政府は当初、高額な贅沢品に対して「HVGT(High Value Goods Tax)」という新税の導入を検討していました。もしこれが自動車にも厳格に適用されれば、アルファードの価格が高騰し、需要が冷え込むリスクがありました。

税制リスクの後退
2025年に入り、政府はこの新税の単独導入を見送り、既存の売上税(SST)の中で調整する方針を固めました。市場にとって最大の懸念材料であった「不透明な増税リスク」が消滅したことは、日本の輸出業者、ひいてはアルファードオーナーにとって非常にポジティブな材料です。

円安や競合EVがリセール相場に与える影響

マレーシア市場における、アルファードと中国製EVミニバン(BYD Denza D9やZeekr 009などを想起させる車両)が競争している様子。消費者がどちらを選ぶか悩んでいるイメージ。しかし、楽観視ばかりもしていられません。私が懸念しているリスク要因は主に2つあります。

① 為替リスク(円高への揺り戻し)

現在の高リセールは、歴史的な「円安」に支えられています。海外バイヤーにとって、1ドル150円の日本円は「バーゲンセール」状態です。もし日銀の政策変更などで1ドル120円台の円高に戻れば、海外バイヤーの仕入れコストが上がり、日本のオークション相場は直ちに下落します。為替レートは、アルファードの株価チャートのようなものです。

② 中国製EVミニバンの猛攻

もう一つの脅威は、ASEAN市場における「アルファード一強」の終わりです。現在、タイやマレーシアでは、BYDの「Denza D9(デンザ D9)」やZeekrの「009」といった、中国製の高級EVミニバンが急速にシェアを伸ばしています。

これらはアルファードよりも安価でありながら、巨大なスクリーンやマッサージ機能など、豪華絢爛な装備を搭載しています。もし現地の富裕層が「日本のガソリン車は古い。これからは中国の先進EVだ」と嗜好を変化させれば、アルファードのブランドプレミアムが剥落し、長期的に輸出需要が細る可能性があります。

資産価値を守るためのグレード選びと保有戦略

これら全てのリスクとチャンスを踏まえた上で、今からアルファードと付き合うなら、どのような戦略が正解なのでしょうか。私なら、迷わず以下の「鉄板構成」を選びます。

推奨スペック:ガソリン車「Z」の2WD

色はホワイトパールかブラック。内装色はブラック。そしてメーカーオプションは、輸出査定でプラス評価になりやすい「左右独立ムーンルーフ」「スペアタイヤ」を選択します。ユニバーサルステップなどは、あってもなくても査定に大きく響かないことが多いです。

保有戦略:実用しながら「売り時」を待つ

もはや「右から左へ流して数百万円の利益」という錬金術の時代は終わりました。しかし、家族で快適に移動できて、所有欲も満たせて、数年後に売却しても「実質的な負担額が軽自動車並み(あるいはプラス)」という魅力は健在です。

大切なのは、焦って安値で手放さないこと。特に輸出規制が解除される「登録から1年経過後」や、車検のタイミングなど、需要が高まる時期を見計らって売却するのが賢明です。

※本記事の情報は2025年10月時点の市場動向に基づくMee個人の分析です。将来の価格を保証するものではありません。売買の最終判断はご自身の責任で行ってください。

まとめ:アルファードのリセール崩壊の真実

洗練されたデザインの40系アルファードが、青空とモダンな街並みを背景に駐車されている風景。この車が単なる移動手段以上の価値を持つことを示唆する。今回の「アルファード リセール 崩壊」騒動について、私の見解をまとめます。

  • 崩壊したのは「バブル」だけ: 車両本来の価値が毀損したわけではありません。
  • ガソリンZが最強の資産: エグゼクティブラウンジとの格差は広がる一方です。
  • マレーシアが命綱: 規制緩和による新規バイヤーの買い支えが、相場の底を固めています。
  • 30系もまだまだ現役: 輸出需要がある限り、型落ちでも高値で売れるチャンスは続きます。

「暴落」という言葉に踊らされず、正しいデータと市場の仕組みを理解すれば、アルファードは依然として世界最強クラスの資産価値を持つ車であることが分かります。この車は、単なる移動手段以上の価値をあなたにもたらしてくれるはずです。この記事が、皆さんの賢いカーライフの一助になれば嬉しいです。