ジープの象徴的存在であり、世界中のオフロード愛好家から絶大な支持を受けるラングラー。その伝統あるモデルに、時代の要請に応える形で登場したプラグインハイブリッド(PHEV)モデルが「4xe」です。しかし、先進的なパワートレインを搭載したにもかかわらず、インターネット上では「ラングラー 4xe 売れてない」という声が囁かれています。その背景には、近年の驚くべき値上げ推移や、消費者からの「値上げしすぎ」との率直な口コミがあり、もはや一部の富裕層しか手が出せない特別な領域に入ったとの指摘も少なくありません。
これから購入を検討する方にとって、PHEV特有の故障のリスクや、数年後の価値がどうなるかという将来的なリセール崩壊への懸念は、決して無視できない深刻な問題です。さらに、中古市場での動向、日本仕様に右ハンドルが設定されていないという実用上の課題、そしてラングラー最大の魅力であるカスタムの自由度がどうなるのか、気になる点は多岐にわたります。一部では「やめとけ」という厳しい意見も見られる中、本当にラングラー4xeは買って後悔する一台なのでしょうか。この記事では、様々な角度から客観的な情報を深く掘り下げ、あなたが後悔しないための判断材料を網羅的に提供します。
この記事で分かること
- ラングラー4xeが売れないと言われる具体的な理由
- 価格高騰の背景と今後の見通し
- 購入前に知るべきメリットとデメリット
- リセールバリューや中古市場の現状
ラングラー 4xe 売れてないという噂は本当?その背景とは?
- ラングラーの驚くべき値上げ推移を解説
- 「値上げしすぎ」の声と価格設定の理由
- 今や金持ちしか乗れない高級車なのか?
- SNSやネットでのリアルな口コミを紹介
- 懸念される故障のリスクとバッテリー問題
ラングラーの驚くべき値上げ推移を解説
近年、ジープ・ラングラーの価格は、長年のファンでさえも戸惑うほどの急激なペースで上昇を続けています。特に2018年に現行のJL型が日本で発売されて以降、その傾向は顕著です。発売当初は500万円台から購入でき、多くのユーザーにとって「頑張れば手が届く本格オフローダー」というポジションでしたが、今やその面影はありません。
この価格上昇が、販売台数に影響を与え始めています。かつてラングラーは年間販売台数1万台以上を記録する人気モデルでしたが、価格が高騰した2022年以降はその勢いに陰りが見え始めており、価格と販売実績の相関関係は明らかです。具体的な価格の推移を、人気の高い4ドアモデル「アンリミテッド・サハラ」を例に見てみましょう。
▼ラングラー アンリミテッド・サハラ 価格推移
年月 | 車両本体価格(税込) | 備考 |
---|---|---|
2018年11月 | 5,990,000円 | JL型発売当初 |
2022年3月 | 7,040,000円 | 約100万円の値上げ |
2022年6月 | 7,200,000円 | |
2022年7月 | 8,300,000円 | 一気に110万円の大幅値上げ |
2023年5月 | 8,700,000円 | |
2023年10月 | 8,870,000円 | サーチャージ(17万円)追加 |
表が示す通り、特に2022年から2023年にかけての価格上昇は異常とも言えるレベルです。わずか1年半の間に257万円もの価格上昇が見られました。さらに、2023年10月からは製造・輸送コストに関するサーチャージが恒久的に上乗せされ、実質的な値上げが断行されています。そして、この記事のテーマであるラングラー4xe(ルビコン)に至っては、車両価格が1030万円と、ついに1000万円の大台を突破しました。この価格帯になると、もはや気軽に購入を検討できる車種ではなく、他の欧州製高級SUVと比較される領域に入ってきているのが現状です。
「値上げしすぎ」の声と価格設定の理由
前述の通り、ラングラーの価格は急騰しており、インターネットの掲示板やSNSでは「憧れだったけど、もう無理」「値上げしすぎ」といった悲鳴に近い声が溢れています。では、メーカーであるステランティスは、なぜこれほど強気な価格設定を続けているのでしょうか。その背景には、世界経済の大きな変動が複雑に絡み合っています。
主な要因としては、以下の点が挙げられます。
価格高騰の主な要因
- 世界的な原材料費の高騰:ラングラーの骨格をなすラダーフレームやボディに使われる鋼材、そして軽量化に貢献するアルミパネルの市場価格が、世界的な需要増と供給不安から高騰を続けています。
- 半導体不足の長期化:先進安全装備やインフォテインメントシステムに不可欠な半導体の供給不足は依然として解消されておらず、これが生産コストを押し上げる大きな要因となっています。
- 国際的な輸送コストの上昇:原油価格の高騰は、アメリカの工場から日本へ車両を運ぶ船の燃料費を直撃し、輸送コストの大幅な増加につながっています。
- 歴史的な円安の進行:輸入車にとって最大の逆風が円安です。日本銀行が公表している統計を見ても明らかなように、近年の急激な円安は、ドル建てで仕入れている車両の円換算価格を自動的に押し上げてしまいます。
これらの要因は他の輸入車ブランドにも共通しますが、ラングラーはアメリカ本国での人気も非常に高いため、日本市場向けに価格を抑えるインセンティブが働きにくいという側面もあります。加えて、ステランティスグループ全体として進めている電動化戦略には莫大な開発投資が必要であり、そのコストの一部が車両価格に反映されているという見方もできます。メーカー側も企業努力だけでは吸収しきれないコスト増を価格に転嫁せざるを得ない苦しい状況ですが、消費者心理としては、あまりに急激な価格改定に戸惑いと不満を感じるのも当然と言えるでしょう。
今や金持ちしか乗れない高級車なのか?
「ラングラーは、もはや金持ちしか乗れない車になってしまった」という意見は、もはや単なる揶揄ではなく、市場におけるラングラーの立ち位置の変化を的確に表しています。かつて500万円から600万円台で新車が手に入った時代を知る人にとっては、現在の800万円後半から1000万円を超える価格帯は、紛れもなく高級車の領域です。
この価格変動は、ラングラーという車の本質的な価値観にも影響を与えています。本来、ラングラーはタフなオフロードコースを走り、泥や傷を勲章として楽しむという、アメリカ的なフロンティアスピリットを体現する車でした。しかし、車両価格がここまで高騰すると、オーナーの心理も変化せざるを得ません。

車両価格1000万円の車体を、木の枝が擦れるような狭い林道や、下回りをヒットする可能性のある岩場に気軽に乗り入れるのは、精神的にも金銭的にも相当な覚悟が必要ですよね。まるでメルセデス・ベンツのGクラス(ゲレンデ)のように、オフロード性能はあくまでステータスシンボルであり、主な用途は街乗りで大切に扱われる高級SUVという側面が、意図せず強まってきているように感じます。
もちろん、経済的に豊かな層にとっては、ラングラーが持つ唯一無二のデザインや世界観は、価格に見合う、あるいはそれ以上の価値があると感じられるでしょう。また、カーボンニュートラルへの移行期において、「今のうちに純粋なガソリンエンジン、あるいはPHEVでもラングラーを手に入れておきたい」と考える層が高額でも購入を決断するケースもあります。しかし、これまでラングラーのカルチャーを支えてきたミドル層のファンにとっては、現実的な購入目標から、手の届かない憧れの存在へと変わってしまったと感じられても仕方がない状況です。このユーザー層の変化と離脱が、販売台数に静かな、しかし確実な影響を与えている可能性は否定できません。
SNSやネットでのリアルな口コミを紹介
ラングラー4xeが市場で実際にどのように評価されているのか、国内のSNSや海外の巨大掲示板「Reddit」などから、ユーザーのリアルな口コミを深掘りしてみました。そこからは、PHEVならではの新しい魅力と、それ以上に看過できない根深い問題点の両方が鮮明に浮かび上がってきます。
肯定的な口コミ:新しいラングラー体験
まず、ポジティブな意見としては、やはり電動パワートレインならではの静粛性やユニークな走行性能を評価する声が多く見られます。
- 「モーターだけで音もなく走り出す感覚は未来的。早朝の住宅街でも気兼ねなく出発できる」
- 「発進時のモーターアシストによるトルクが強烈で、信号待ちからのスタートはガソリン車より明らかに速い」
- 「キャンプ場でエンジンをかけずに給電機能を使えるのはPHEVならでは。アウトドアでの活用シーンが広がる」
- 「モーターによる緻密なトルク制御は、実は岩場などをゆっくり進むロッククローリングで非常に有効。新しいオフロードの可能性を感じる」
このように、伝統的なラングラーの「武骨でワイルド」なイメージとは異なる、静かで滑らか、かつインテリジェントな走りに新たな価値を見出しているユーザーも確かに存在します。特にアウトドアとの親和性の高さは、4xeならではの魅力と言えるでしょう。
否定的な口コミ:信頼性とコストへの厳しい視線
一方で、特に購入や維持にかかるコストにシビアな海外ユーザーからは、ネガティブな意見も数多く投稿されています。特に信頼性に関する問題は深刻です。
- 「価格が高すぎる。PHEVのメリットを考えても、ガソリン車との価格差を正当化できない」
- 「重いバッテリーのせいでハンドリングが悪化した。ラングラーらしい軽快さがない」
- 「バッテリー関連の火災リスクでリコールが出ている。安心して乗れない」
- 「システムが複雑すぎて、ディーラーでさえ原因不明のトラブルに対応できないことがある」
特に信頼性に関しては、Jeepの米国公式サイトでも確認できるように、4xeモデルはバッテリーパック内部の欠陥による火災リスクなどを理由に、複数回のリコールが届けられています。(参照:Jeep USA 公式サイト) このような情報は、消費者の不安を煽り、購入を躊躇させる大きな要因となります。価格、信頼性、そして後述する資産価値に関する根強い懸念が、4xeの評価を厳しいものにしているのです。
懸念される故障のリスクとバッテリー問題
ラングラー4xeの購入を検討する上で、避けては通れない最大のハードルが、故障のリスク、とりわけPHEVシステムの心臓部である高電圧駆動用バッテリーに関する長期的な問題です。
ガソリンエンジンと電気モーター、そして複雑な制御システムを組み合わせたPHEVは、その構造上、従来のガソリン車に比べて故障が発生する可能性のある部品点数が格段に多くなります。前述のリコール問題もその一端ですが、より深刻なのは事故やリコールとは別の、日常使用における潜在的なリスクです。
バッテリーが抱える避けられない2つの大きな懸念
- 避けられない経年劣化と高額な交換費用:スマートフォンのバッテリーが年々持たなくなるのと同じように、車載用のリチウムイオンバッテリーも充放電を繰り返すことで徐々に性能が低下(SOH: State of Healthが悪化)していきます。メーカーは保証期間を設けていますが、保証が切れた後にバッテリー交換が必要となった場合、その費用は数十万円から、場合によっては100万円を超える高額な出費となる可能性があります。
- 資産価値への直接的な影響:ラングラーは本来、中古車市場で非常に高い価格を維持する「リセールバリューの王様」として知られています。しかし、日々その価値が確実に減少していくバッテリーを搭載した4xeが、ガソリン車と同等の資産価値を長期にわたって維持できるかは極めて不透明です。中古車として売却する際、バッテリーの劣化具合が査定額を大きく左右することは間違いなく、これは将来的なリセール崩壊のリスクを常に抱えていることを意味します。
このバッテリー問題は、単なる維持費や故障リスクという話に留まりません。ラングラーが築き上げてきた「買ってからも価値が落ちにくい、賢い選択」というブランドイメージそのものを揺るがす可能性を秘めています。言ってしまえば、時間とともに価値が確実に目減りしていく消耗品を、車両の最も重要な部分に抱えている状態であり、これが多くのユーザーを不安にさせている最大の理由と言えるでしょう。
ラングラー4xeが売れてない現状での購入判断
- 購入を「やめとけ」と言われる最大の理由
- リセール崩壊は避けられないのか?
- 中古車市場での4xeの現状と注意点
- なぜ日本仕様に右ハンドルがないのか
- PHEVでのカスタムの可能性と制約
購入を「やめとけ」と言われる最大の理由
ラングラー4xeに対して、一部のユーザーから「やめとけ」という強い警告が発せられる背景には、これまで述べてきた複数のネガティブな要因がありますが、その核心にある最大の理由は「極めて高い初期投資に対して、将来的なリターン(資産価値)が著しく不透明である」という致命的なリスクに集約されると言えるでしょう。
具体的に、なぜ「割に合わない」と判断されるのか、3つのポイントに分解して解説します。
- 高すぎる車両価格と乏しい経済的メリット:1000万円を超える価格は、PHEVがもたらす環境性能や静粛性といった付加価値を考慮しても、多くの消費者にとって受け入れがたい水準です。ガソリン代の節約効果は限定的であり、ガソリンモデルとの数百万円の価格差を燃費で回収することは、一般的な走行距離ではまず不可能です。
- 不透明な長期信頼性と維持コスト:PHEVという比較的新しい技術には、まだ解明されていない未知の故障リスクが伴います。保証期間内は安心かもしれませんが、保証が切れた後の高額な修理費用、特にバッテリー交換の可能性は、長期保有を考えるユーザーにとって大きな不安材料です。
- 時限爆弾とも言えるバッテリーの存在と資産価値:これが最も大きな懸念点です。ラングラー最大の魅力の一つであった「価値が落ちにくい」という特性が、バッテリーの経年劣化という避けられない時限爆弾によって、根底から覆される可能性があります。数年後に価値が大きく下落するリスクを抱えながら、1000万円もの初期投資を行うことに、多くの人が合理性を見出せずにいるのです。
海外の自動車ブローカーからは「4xeは残価設定率の高いリースでしか売れないビジネスモデルだったが、そのリース会社でさえも将来価値のリスクを懸念してサポートを打ち切り始めた。その結果、ディーラーに在庫が溢れている」という厳しい声も聞かれます。つまり、プロの目から見ても、購入後の価値の目減りが激しいと判断されているのです。これらの複合的な理由から、慎重な判断を促す「やめとけ」という声が大きくなっていると考えられます。
リセール崩壊は避けられないのか?
「リセール崩壊」、つまり売却時の価格が期待を大きく裏切って下落するのではないかという懸念は、高価な4xeを検討する上で最もシビアな問題です。結論から言えば、残念ながら従来のガソリンモデルのラングラーと同等の高いリセールバリュー(再販価値)を期待するのは、極めて非現実的と言わざるを得ません。
その最大の理由は、繰り返しになりますが時間と共に必ず劣化する駆動用バッテリーの存在です。中古車市場において、車両の状態は価格を決定する重要な要素ですが、PHEVやEVの場合、それに加えて「バッテリーの健康状態(SOH)」が査定額を大きく左右します。5年後、7年後の中古車市場で4xeがどのような評価を受けるかは未知数ですが、少なくとも以下の点はほぼ確実視されています。
4xeのリセールが厳しいと考えられる具体的理由
- バッテリー保証期間との連動:メーカーが設定する高電圧バッテリーの特別保証(例:8年16万km)が切れた車両は、「いつ高額な交換費用が発生するかわからない」という大きなリスクを抱えることになります。そのため、保証が切れるタイミングで中古車価格が大幅に下落する、いわゆる「崖」のような現象が起きる可能性があります。
- 急速な技術の陳腐化:バッテリーやモーターの技術はまさに日進月歩の世界です。数年後には、よりエネルギー密度が高く、安価で、長寿命なバッテリーを搭載した新型EVやPHEVが市場に登場しているでしょう。そうなると、現行4xeの技術は相対的に「旧世代の古いもの」として扱われ、中古車としての魅力が薄れ、価値が下がる可能性があります。
- ガソリン車への揺るぎない需要:一方で、構造がシンプルで信頼性が高く、カスタムも自由自在なガソリンエンジンのラングラーは、電動化が進む将来においても「古き良き機械」として、一部の愛好家から根強い需要が見込まれます。この安定した需要がガソリンモデルの中古車価格を下支えし、結果として相対的に4xeの価値が低く見られる状況を生み出すと考えられます。
もちろん、将来的にガソリン価格がさらに高騰したり、政府の規制が強化されるなど、PHEVにとって追い風となる状況も考えられます。しかし、現時点では、バッテリーという「時間と共に価値が確実に下がる」という構造的な弱点を抱える4xeが、ガソリン車のようなリセール神話を築くのは極めて困難と言わざるを得ません。
中古車市場での4xeの現状と注意点
新車販売が伸び悩んでいるという現状は、裏を返せば中古車市場に面白い動きが出てくる可能性を示唆しています。ラングラー4xeを中古で狙うというのは、果たして賢い選択なのでしょうか。現状としては、まだ市場に流通している台数が少なく、価格も高値で安定しているとは言えない、まさに発展途上の市場です。
しかし、一部の情報では、販売不振からディーラーに4xeの在庫車や試乗車が滞留しているという話も聞かれます。今後、これらの登録済み未使用車や、走行距離の極端に少ない極上中古車が、新車価格に比べて割安な価格で市場へ放出されてくる可能性があります。実際に海外のフォーラムでは「ディーラーが在庫処分に困っていたから、大幅な値引き交渉に応じてくれて安く買えた」という声も見られます。
もし、このような中古の4xeを検討する場合、価格の安さだけで安易に飛びつくのは非常に危険です。ガソリン車の中古とは全く異なる、PHEVならではの注意点を必ず押さえておく必要があります。
中古4xe購入時に絶対に確認すべきチェックポイント
- 最重要:バッテリーの健康状態(SOH)の客観的データ:体感やセールストークではなく、必ずディーラーなどで専用の診断機を接続してもらい、「バッテリーの健康状態(SOH)が何%か」を示す診断レポートを発行してもらいましょう。これが中古PHEVの価値を決定づける最も重要な指標です。
- 保証の継承手続きの確認:メーカーの新車保証やバッテリー特別保証が残っている車両の場合、名義変更によってその保証が自分にきちんと継承されるか、またそのための手続きや費用について事前に販売店へ明確に確認することが重要です。
- 充電インフラの履歴確認:前オーナーが自宅での普通充電をメインにしていたか、それとも急速充電を頻繁に利用していたかによって、バッテリーへの負荷は大きく異なります。詳細な充電履歴の確認は難しいかもしれませんが、ヒアリングできる範囲で確認しておくと良いでしょう。
PHEVやEVの中古車購入は、従来のガソリン車選び以上に専門的な知識と慎重さが求められます。必ずPHEVの販売・整備実績が豊富な信頼できる販売店を選び、車両の状態を客観的なデータでしっかりと確認してから、最終的な判断を下すことが不可欠です。
なぜ日本仕様に右ハンドルがないのか
日本の道路事情やインフラを考えると、多くのドライバーにとって右ハンドル仕様の有無は、購入を決定する上で極めて重要な要素です。これまで正規輸入されてきたガソリンモデルのラングラーは、基本的に右ハンドル仕様が導入され、それが日本国内での幅広い人気を支える大きな一因となっていました。しかし、驚くべきことに、2024年現在、日本市場に正規導入されているラングラー4xeは左ハンドル仕様のみというラインナップになっています。
先進的なPHEVモデルになぜ右ハンドルが設定されないのでしょうか。メーカーであるステランティスからその明確な理由は公表されていませんが、業界の慣例や技術的な側面から、以下の3つの複合的な理由が考えられます。
- グローバルな生産・販売戦略の優先:ジープの最大の市場は言うまでもなく北米であり、生産ラインの設計や部品供給網は左ハンドルを基本として最適化されています。日本はラングラーにとって重要な市場の一つではあるものの、グローバル全体で見れば販売台数は限定的です。そのため、日本市場のためだけに右ハンドル仕様のPHEVシステムを開発・生産・認証取得するには、莫大なコストと時間がかかり、投資対効果が見合わないと判断されている可能性があります。
- 販売台数のシビアな見込み:前述の通り、1000万円を超える高価格帯である4xeモデルが、日本市場で爆発的に売れるとはメーカー自身も想定していない可能性があります。「売れない」と予測される市場のために、わざわざコストをかけてまで右ハンドル車を開発・投入するのは、企業経営の観点から見て合理的な判断とは言えないのです。
- PHEV特有の技術的・物理的な制約:これが最も根深い問題かもしれません。PHEVシステムは、バッテリー、インバーター、高電圧ケーブル、冷却装置など、多数のコンポーネントで構成されています。これらの複雑な部品のレイアウトが、左ハンドルを前提にミリ単位で最適化されている場合、ステアリングシャフトやペダル類、ブレーキのマスターシリンダーなどを右側に移設することが、物理的に極めて困難、あるいは他の重要部品と干渉してしまう可能性があります。これを解決するには、根本的な再設計が必要となり、右ハンドル化を阻む「見えない技術的な壁」になっていることも十分に考えられます。
左ハンドル特有のスタイリッシュさに魅力を感じるドライバーも一部にはいますが、料金所での支払いや駐車場の発券機、狭い道でのすれ違いや追い越し時の視界など、日常的な使い勝手を考えると、多くの日本人ドライバーにとっては大きなデメリットとなります。このハンドル位置の問題も、4xeが一部の熱心なファン向けのニッチなモデルに留まり、広く一般に受け入れられていない一因と言えるでしょう。
PHEVでのカスタムの可能性と制約
ラングラーを所有する最大の喜びの一つが、自分だけのスタイルを追求できる無限の「カスタム」の可能性です。リフトアップによる迫力あるスタイリング、大径タイヤへの換装による走破性の向上、スチールバンパーやウインチの装着など、その自由度の高さは他のSUVの追随を許しません。
では、先進的なPHEVであるラングラー4xeでも、これまでと同様のカスタムは楽しめるのでしょうか。結論から言うと、カスタム自体は可能ですが、ガソリン車に比べて無視できない、いくつかの深刻な制約が伴います。
最大の制約となるのが、PHEV化に伴う「重量の増加」と「電気系統の複雑化」です。

公式スペックを見ると、4xe(ルビコン)の車両重量は2350kg。これはガソリンモデルのアンリミテッド・ルビコン(2050kg)と比較して、実に約300kgも重くなっています。この「大人4人分以上」に相当する重量増が、カスタムの根幹である足回りに大きな影響を及ぼすのです。
例えば、リフトアップをする場合、この増加した重量を支えきれる高強度なサスペンションやスプリングを選定する必要があります。安易にガソリン車用のパーツを流用すると、性能を発揮できないばかりか、部品の早期劣化や破損につながる危険性があります。また、車両重量の増加はブレーキシステムへの負荷も増大させるため、大径タイヤ化によるさらなる重量増は、制動距離の延長という安全上のリスクを招く可能性も考慮しなければなりません。
さらに厄介なのが、高電圧の電流が流れる複雑な電気系統です。ウインチや補助ライトといった消費電力の大きな電装品を安易に追加すると、車両のCAN-BUS(車両内統合制御ネットワーク)システムに予期せぬエラーを引き起こし、警告灯の点灯や最悪の場合は走行不能に陥るリスクもゼロではありません。カスタムを行う際は、PHEVの複雑な構造と電気システムを完全に理解している、極めて専門知識の豊富なプロショップに相談することが絶対条件となります。
このように、4xeでカスタムの楽しみが完全に失われるわけではありませんが、ガソリン車と同じ感覚で気軽に手を加えられないという事実は、多くのラングラーファンにとって大きなデメリットと感じられることでしょう。
ラングラー 4xe 売れてない現状での賢い選択
この記事では、「ラングラー 4xe 売れてない」と言われる理由について、価格、信頼性、リセールバリュー、実用性、そしてカスタムといった多角的な視点から深く掘り下げてきました。最後に、これまでの情報を踏まえた上で、あなたがラングラーという車と向き合う際の「賢い選択」について、要点をまとめて結論とします。
- ラングラー4xeの価格は急騰を続け、補助金を考慮しても1000万円を超える高価格帯に突入した
- 短期間での大幅な値上げに既存ファンから「値上げしすぎ」との声が多数上がっている
- 価格高騰の背景には急激な円安、原材料費や輸送コストの上昇など複合的な要因がある
- 結果として「気軽に遊べるオフローダー」から「一部富裕層向けの高級SUV」へとキャラクターが変貌した
- 否定的な口コミでは価格への不満に加え、信頼性や将来の資産価値への強い懸念が目立つ
- 複雑なPHEVシステムは未知の故障リスクを抱え、海外ではリコールも複数発生している
- 特に駆動用バッテリーは避けられない経年劣化があり、将来的に高額な交換費用が発生するリスクがある
- 日々価値が減少するバッテリーの存在は、ラングラー最大の魅力だった高いリセールバリューを大きく損なう要因と見られている
- 「やめとけ」と言われる最大の理由は、高額な初期投資に対して将来の資産価値下落リスクが大きすぎることにある
- 中古車は割安に購入できる可能性があるが、最重要項目であるバッテリーの健康状態(SOH)の確認が不可欠
- 日本仕様は左ハンドルのみの設定で、多くのドライバーにとって日常の使い勝手に課題が残る
- ラングラーの醍醐味であるカスタムは可能だが、大幅な重量増と複雑な電気系統が大きな制約となる
- モーターによる静かで力強い走行性能や、アウトドアでの給電機能に強い価値を見出す特定のユーザーには魅力的な選択肢となり得る
- しかし、長期的なコストパフォーマンス、信頼性、資産価値を重視する大多数のユーザーにとっては、リスクの少ないガソリンモデルが依然として賢明で合理的な選択と言えるだろう
- 最終的な判断は、冷静な情報収集と、可能であればガソリン車と4xeの両方を実際に試乗して、自身の価値観と照らし合わせることが最も重要である