愛車の走行距離が10万キロを超え、過走行車の仲間入りをすると、エンジンオイル選びに悩みますよね。特にメーカーの指定が0w-20の場合、このまま使い続けて良いのか不安になる方も多いでしょう。巷では「古い車には硬いオイルが良い」と言われ、0w-20指定車に5w-30を入れるべきか迷うところです。実際にオイル粘度を変えると、燃費やエンジン音にどのような影響があるのでしょうか。
走行距離が15万キロを超えた場合のエンジンオイル粘度の考え方や、軽自動車の過走行におすすめのオイルはあるのか、気になるところは尽きません。この記事では、過走行車の0w-20推奨車におけるオイル選びの疑問を徹底的に解説し、あなたの愛車に最適な一缶を見つけるお手伝いをします。
この記事でわかること
- 過走行車に0w-20オイルを使い続けるリスク
- オイル粘度を変えるメリットとデメリット
- 走行距離や車種に応じたオイル選びの基準
- 状況別におすすめのエンジンオイルとその特徴
過走行車にオイル0w20を使い続ける是非
- そもそもオイル粘度とは何を指すのか
- 0W-20推奨車に指定粘度を入れる基本
- 古い車に0W-20オイルを使用するリスク
- 15万キロ走行車のエンジンオイル粘度の目安
- 0w-20から5w-30でエンジン音は変わる?
そもそもオイル粘度とは何を指すのか
エンジンオイルの缶に必ず記載されている「0W-20」や「5W-30」といった表示は、オイルの「粘度(ねんど)」、つまりオイルの硬さや粘り気の度合いを示す国際的な規格です。この表示を正しく理解することが、適切なオイル選びの第一歩となります。
結論から言うと、この表示は「低温時の性能」と「高温時の性能」という2つの側面からオイルの特性を表しています。
W(Winter)が示す低温時の性能
ハイフン(-)の左側にある「0W」や「5W」の数字は、オイルがどれだけ低い温度でも硬くなりにくいか、つまり低温時の始動性を示しています。Wは「Winter(冬)」の頭文字です。
この数字が小さいほど、オイルは低温でもサラサラの状態を保ちやすく、エンジン始動時の抵抗が少なくなります。これにより、特に冬場の朝など、エンジンが冷え切っている状態でもスムーズに始動でき、始動直後のエンジン内部の摩耗を抑えることができます。
ハイフンの右側が示す高温時の性能
ハイフンの右側にある「20」や「30」といった数字は、高温時の油膜の厚さを示します。エンジンが稼働しているとき、内部は100℃以上の高温に達します。この数字が大きいほど、高温になってもオイルが粘度を保ち、エンジン部品の間にしっかりとした油膜を維持できることを意味します。
この油膜が、金属部品同士が直接接触するのを防ぎ、エンジンを摩耗から守る重要な役割を果たしているのです。
表示 | 左側の数字+W (低温粘度) |
右側の数字 (高温粘度) |
---|---|---|
0W-20 | 数字が小さいほど低温に強く、始動性が良い(例:0Wは-35℃まで対応) | 数字が大きいほど高温に強く、油膜を厚く保てる |
このように、多くのオイルは低温時から高温時まで幅広い温度域に対応できる「マルチグレードオイル」と呼ばれています。これにより、季節ごとにオイルを交換する必要がなく、一年中安定した性能を発揮できるのです。
0W-20推奨車に指定粘度を入れる基本
お乗りの車の取扱説明書やエンジンルームのラベルに「0W-20」と記載されている場合、基本的にはその指定粘度を守ることが最も重要です。
なぜなら、自動車メーカーは、開発したエンジンの性能を最大限に引き出すために、特定の粘度のオイルに合わせて各部品を精密に設計しているからです。
近年のエンジン、特に0W-20のような低粘度オイルを指定するエコカーのエンジンは、部品同士の隙間(クリアランス)を非常に狭く設計しています。これは、オイルの抵抗(フリクションロス)を極限まで減らし、燃費性能を向上させることが大きな目的です。

言ってしまえば、メーカーはその車のことを最も熟知している専門家です。指定された粘度は、燃費、エンジン保護、環境性能など、あらゆる要素を考慮した上での最適な答えなのです。
もし指定よりも硬いオイル(例えば5W-30など)を入れると、オイルの抵抗が増えてしまい、メーカーが意図した燃費性能を発揮できなくなる可能性があります。また、狭い隙間にオイルがうまく流れ込まず、潤滑不足を引き起こすリスクもゼロではありません。
指定粘度を守らない場合のリスク
- 燃費の悪化: オイルの抵抗が増え、本来の燃費性能を発揮できない。
- 潤滑性能の低下: エンジン内部の細部にオイルが行き渡りにくくなる可能性がある。
- メーカー保証の対象外: オイルが原因でエンジンに不具合が生じた場合、保証を受けられない可能性がある。
これらの理由から、特に走行距離が少なく、エンジンの状態が良い場合は、迷わずメーカー指定の0W-20を使用するのがセオリーと言えます。
古い車に0W-20オイルを使用するリスク
メーカー指定の重要性を理解した上で、次に考えるべきは「古い車」や「過走行車」に0W-20を使い続けることのリスクです。結論として、エンジンの状態によってはリスクが存在します。
主な理由は、走行距離を重ねることでエンジン内部の部品が少しずつ摩耗し、新車時には非常に狭かった部品同士の隙間(クリアランス)が広がってくるからです。
ピストンとシリンダーの隙間が広がった状態で、元々サラサラな0W-20オイルを使用し続けると、以下のような症状が現れることがあります。
オイル消費(オイル上がり・下がり)
広がった隙間からエンジンオイルが燃焼室に入り込み、ガソリンと一緒に燃えてしまう現象です。これにより、オイルの量が徐々に減っていきます。マフラーから白煙が出る場合は、このオイル消費が進行しているサインかもしれません。
エンジンノイズの増大
油膜が隙間を十分に埋められず、金属部品同士の打音(メカニカルノイズ)が大きくなることがあります。「カタカタ」「カチャカチャ」といった音が以前より気になるようになったら、油膜が薄くなっている可能性があります。
ただ、これはあくまで可能性の話です。オイル交換を適切なタイミングで実施し、エンジンに過度な負担をかけない運転を心がけていれば、10万キロを超えても全く問題なく快調なエンジンも数多く存在します。そのため、「古い車だから」「過走行車だから」という理由だけで、すぐに0W-20をやめる必要はありません。まずは愛車の状態をよく観察することが大切です。
15万キロ走行車のエンジンオイル粘度の目安
走行距離が15万キロを超えてくると、多くの車でエンジンの摩耗がそれなりに進行していると考えられます。この段階では、エンジンの状態に応じてオイルの粘度を上げることを具体的に検討する価値があります。
ただし、一律に「15万キロ超えたら5W-30にすべき」というわけではありません。最も重要な判断基準は「オイル消費の有無」です。
判断基準:オイル交換の間にオイルレベルゲージの残量が著しく減っていないか?
定期的にオイルレベルゲージをチェックし、次のオイル交換までにオイルを継ぎ足す必要があるほど減っている場合は、粘度を一段階上げる(0W-20 → 5W-30など)ことを試す良いタイミングと言えます。
硬いオイルは油膜が厚いため、広がったクリアランスを埋める効果(密封作用)が期待でき、オイル消費を抑制できる可能性があります。
走行距離 | エンジンの状態 | 推奨される考え方 |
---|---|---|
〜10万キロ | 特に不具合なし | メーカー指定の0W-20を継続 |
10万キロ〜 | オイル消費やノイズが少し気になり始めた | 5W-30への変更を検討開始 |
15万キロ〜 | 明らかなオイル消費がある | 5W-30や、場合によっては10W-30を試す価値あり |
この表はあくまで一般的な目安です。オイル消費が全くない快調なエンジンであれば、15万キロを超えても0W-20を使い続ける選択も十分に考えられます。愛車の「声」を聞き、状態に合わせた判断を心がけましょう。
0w-20から5w-30でエンジン音は変わる?
オイルの粘度を0W-20から5W-30へ変更した場合、エンジン音が静かになる傾向があります。これは、多くのドライバーが体感しやすい変化の一つです。
理由は非常にシンプルで、粘度の高いオイルはより厚く、強靭な油膜を形成するからです。エンジン内部では、ピストン、クランクシャフト、カムシャフトなど、多くの金属部品が高速で動き回っています。これらの部品の間にできる厚い油膜がクッションの役割を果たし、金属同士が接触する際に発生する衝撃音や振動を吸収してくれます。

特に、エンジンが温まってきた後の「カタカタ」「カチャカチャ」といったメカニカルノイズが低減されることが多いです。静粛性を重視する方にとっては、大きなメリットと感じられるでしょう。
一方で、デメリットとして考えられるのは、エンジン始動時の抵抗がわずかに増えることです。粘度が高い分、オイルが硬めになるため、始動直後のフィーリングが少し重く感じられるかもしれません。もっとも、5W-30程度であれば、その差を体感できる人は少ないでしょう。
エンジン音の変化は、オイル粘度がエンジン保護性能に直接影響している証拠でもあります。静かになったということは、それだけ部品間の衝撃が緩和されていると考えることもできるのです。
過走行車のオイル0w20選びとおすすめ
- 0w-20指定車に5w-30を入れる選択肢
- 軽自動車の過走行におすすめのオイルとは
- 走行状況で選ぶおすすめエンジンオイル紹介
- 指定外粘度オイルを選ぶ際の注意点
- まとめ:過走行車のオイル0w20選びの結論
0w-20指定車に5w-30を入れる選択肢
ここまで解説してきた通り、過走行の0W-20指定車にとって、5W-30のオイルは非常に有効な選択肢の一つです。特に、以下のような状況に当てはまる場合は、粘度アップのメリットを享受しやすいでしょう。
5W-30への変更がおすすめなケース
- オイル消費が気になる: 厚い油膜がピストンリングの密封性を助け、オイル消費を抑制する効果が期待できます。
- エンジンの静粛性を高めたい: メカニカルノイズを低減し、より静かな乗り心地を目指せます。
- 高速道路の走行が多い: 高回転・高負荷が続く状況でも、強靭な油膜がエンジンをしっかりと保護します。
5W-30は世界中の多くの車種で標準的に採用されている粘度であり、非常に汎用性が高く、製品のラインナップも豊富です。そのため、自分の好みに合ったオイルを見つけやすいというメリットもあります。
もちろん、デメリットも理解しておく必要があります。
5W-30へ変更する際の注意点
- 燃費のわずかな悪化: オイルの抵抗が増えるため、0W-20使用時と比較して燃費が少し落ちる可能性があります。
- 低温時の始動性: 0Wに比べると5Wは低温性能がわずかに劣りますが、日本のほとんどの地域では問題になるレベルではありません。
これらのメリットとデメリットを天秤にかけ、愛車の状態やご自身の運転スタイルに合わせて判断することが賢明です。もし迷うようであれば、まずは一度5W-30を試してみて、燃費やフィーリングの変化を体感してみるのも良い方法です。
軽自動車の過走行におすすめのオイルとは
軽自動車は、普通車以上にエンジンオイルの管理が重要になります。なぜなら、排気量が小さいため、どうしてもエンジンを高回転で使う機会が多くなり、オイルにかかる負荷が大きくなりがちだからです。
特に過走行の軽自動車では、エンジンの状態に合わせて慎重にオイルを選ぶ必要があります。
ノンターボ車の場合
街乗りが中心のノンターボ車でも、発進や合流でアクセルを踏み込むシーンは多いものです。過走行でエンジンノイズやパワーダウンを感じる場合は、5W-30がおすすめです。厚めの油膜がエンジンを保護し、静粛性の向上も期待できます。
ターボ車の場合
ターボ車は、タービンが高温・高回転で稼働するため、オイルにとって非常に過酷な環境です。タービンの軸を潤滑・冷却するのもエンジンオイルの重要な役割であり、特に高温時の保護性能が求められます。
過走行のターボ車では、メーカー指定が0W-20であっても、より高温に強い5W-30の使用を強く推奨します。これにより、タービンを含めたエンジン全体の寿命を延ばすことにつながります。
軽自動車はエンジンオイルの規定量が少ない(3リットル未満が多い)ため、オイルの劣化が早く進む傾向にあります。粘度選びも大切ですが、それ以上に3,000km〜5,000kmごとの定期的なオイル交換を徹底することが、エンジンを長持ちさせる最大の秘訣です。
走行状況で選ぶおすすめエンジンオイル紹介
オイル選びは、走行距離だけでなく、普段どのような道を走るかという「走行状況」も大きく影響します。ご自身の運転スタイルに合った粘度を選ぶことで、より快適で安心なカーライフを送ることができます。

ここでは、3つの典型的な走行シーンに分けて、おすすめのオイル粘度の考え方を紹介します。
走行状況 | おすすめの考え方 | 重視するポイント |
---|---|---|
街乗り・通勤が中心 | 燃費を重視するなら0W-20。過走行でノイズが気になるなら5W-30も良い選択肢。 | 燃費性能、ストップ&ゴーへの対応力 |
高速道路の走行が多い | 高回転が続くため、エンジン保護を考えて5W-30がおすすめ。油膜の強さが安心感につながります。 | 高温時のエンジン保護性能、油膜の維持力 |
山道やスポーツ走行を楽しむ | エンジンへの負荷が非常に高いため、高温・高負荷に強い5W-30や、場合によっては5W-40も視野に入れます。 | 極端な高温下での保護性能、せん断安定性 |
このように、一口に過走行車と言っても、乗り方によって最適なオイルは変わってきます。特に高速走行や山道走行が多い方は、燃費性能よりもエンジンを確実に保護できる能力を優先して、少し硬めのオイルを選ぶのが賢明と言えるでしょう。
指定外粘度オイルを選ぶ際の注意点
メーカー指定外の粘度のオイルを選ぶことは、エンジンのコンディションを維持するための有効な手段ですが、実行する際にはいくつかの注意点があります。基本的には自己責任で行うメンテナンスであることを理解しておく必要があります。
指定外粘度オイル選びの3つの注意点
- メーカーの許容範囲を確認する: 車の取扱説明書には、0W-20が「推奨」とされている一方で、5W-30や10W-30が「使用可能」として併記されている場合があります。まずは、メーカーが許容している範囲内の粘度から試すのが最も安全です。
- メーカー保証の対象外になる可能性: 前述の通り、オイルが原因でエンジンにトラブルが発生した場合、メーカー保証やディーラーの保証を受けられなくなる可能性があります。
- 急激な粘度変更は避ける: 例えば、0W-20からいきなり10W-40のような、あまりにも硬いオイルにすると、オイルの循環が悪くなるなど、かえってエンジンに負担をかけることがあります。変更する場合は、一段階ずつ(0W-20 → 5W-30)試していくのが基本です。
また、ディーラーや整備工場によっては、安全上の理由から指定外の粘度のオイル交換を断られるケースもあります。粘度変更を検討している場合は、事前に作業を依頼する工場に相談しておくとスムーズです。

不安な場合は、やはりプロに相談するのが一番です。車の状態を診断してもらった上で、最適なオイルを提案してもらいましょう。
まとめ:過走行車のオイル0w20選びの結論
この記事で解説してきた、過走行車のエンジンオイル選びに関する要点を最後にまとめます。
- 過走行車でも基本はメーカー指定の0w-20が第一候補
- エンジンの摩耗が進むと部品間の隙間が広がる可能性がある
- 隙間が広がるとオイル消費や異音の原因になりうる
- 0w-20オイルは燃費性能に優れるが油膜は比較的薄い
- 5w-30オイルは油膜が厚くエンジン保護性能や静粛性が高い
- オイル粘度を上げると一般的に燃費はわずかに悪化する
- オイル消費やノイズが気になりだしたら粘度アップを検討する
- 走行距離10万キロ超えが検討タイミングの一つの目安
- 軽自動車は高回転になりがちでオイルへの負荷が大きい
- ターボ車は特に高温時のエンジン保護性能が重要になる
- 高速走行や山道走行が多い場合も硬めのオイルが有利
- 粘度を変更する際はメーカーの許容範囲内から試すのが安全
- オイル選びは粘度だけでなくベースオイルの種類も考慮に入れる
- オイル交換は指定された走行距離や期間を守ることが最も大切
- 最終的な判断に迷う場合はディーラーや信頼できる整備工場に相談する